「行政書士の男らを逮捕 虚偽の建設許可申請容疑 宮城県警」(河北新報記事より)

2024年02月19日

令枝和6年2月14日の河北新報の記事で、行政書士の逮捕事案について書かれていました。以前、私も建設業許可についての事案を取り扱ったことがありました。その中でいろいろ考えさせられたことがありましたので、ご紹介したいと思います。

目次

1.事件の概要

2.依頼者と許認可機関の立場

3.私の体験

4.まとめ


1.事件の概要

令和6年2月14日 河北新報記事引用

 「建設業の許可申請を巡り、宮城県に虚偽の書類を提出したとして、県警生活環境課と仙台南署は14日、建設業法違反の疑いで、仙台市太白区の太白行政事務所の行政書士の男(70)と職員の男2人の計3人を逮捕した。

 県警によると行政書士の男らは2021~22年、県内の解体業など3社の代理人として、県から建設業の許可を取得する際、県に虚偽の工事実績などの書類を提出するなどした疑いが持たれている。

 県警の捜査員約20人が同日午前10時40分ごろ、事務所に家宅捜索に入り、男らを逮捕したほか、関係書類などを押収した。

 県から昨年3月、不正の疑いの通報があり、県警は同7月、事務所を家宅捜索するなどして裏付け捜査を進めていた。」(記事引用終わり)

 建設業の許可申請の事件で発生した事案です。士業全般に言えることなのですが、依頼者の立場で、できることを積み重ねて仕事をしますが、通すために「偽造」はまずいですよね。

2.依頼者と許認可機関の立場

 士業にとって、依頼者の立場に立ちすぎることは、ダメです。依頼者は、許可が欲しいゆえに虚偽の事実を話をしてくるかもしれません。専門家であれば、その点をきっちり指摘して「できない」という判断をすべきなのではないでしょうか。

 なぜなら、許可を出すのは、我々士業ではなく、行政機関なわけですから。その一定のルールに従って、申請に必要な要件を証明する書類の作成をしなければなりません。勿論事実に基づいてです。こうやれば通るかもしれない場合には、依頼者に「この部分が引っかかるので、通らない場合があるかもしれませんよ。他にも、そのような事実があれば、資料を提出してください。」と、一言言っておく必要がありますよね。これで怒って依頼を断るような依頼者の場合には、「何かある」と疑ってしまいます。間違っても、それに加担する行為はご法度です。

3.私の体験

 私も以前に多様な経験をしました。私の場合、「できないものはできません。」と言っても、ひつこく「できないはずはない」と言ってくる方もいらっしゃいましたが、許可を出す行政機関が求める要件に達していない段階でできないわけであって、依頼者の感情論ではないという話をマイルドに話をしました。それでも引き下がりませんでしたので、先輩の行政書士にお願いして、セカンドオピニオン的に相談していただきました。結果は、できないということになりました。その後、その依頼者と話をする機会があり、その中で「やっぱりだめなのか」と一言。その点を聞くと、最初に近くの行政書士にも聞いていたみたいです。勿論断られていたので、私のところに来たみたいですが、それ、最初に言えよって話です。圧をかけたからと言って、自分の希望願望通りになるほど、行政の許認可は甘いものではないですからね。こういった方、非常に多いので、私は毅然とした態度で接しています。

 許可を出すのは、行政機関であって、我々士業はそろった資料を申請できる形にまとめて、申請を代理する存在です。通らない資料を偽造する存在ではありません

4.まとめ

 専門家である士業の中には、なあなあの関係で依頼者と接する方もいらっしゃるようですが、依頼を受ける以上、その信頼関係が発生します。「できない」ものをはっきり「できない」と言ってあげることも、依頼者の方も、その場は怒るかもしれませんが、それも信頼関係と思っています。

 以前、単位会の研修で、入国管理局職員による「申請取次業務」の話の中で、このように話をされていました。「我々と行政書士さんの間には、適切な申請をしていただくといった関係にあります。協力関係にある場合もありますが、対立関係になる場合だってあることも、肝に銘じておいてください。」とのこと。

 我々のバッジは、国から認められて付けているものです。資格証もしかり。その信頼関係は、依頼者との間の信頼関係だけではなく、資格を与えた国に対しての信頼関係もあることを忘れてはなりません。本当に、まじめにやっている人たちの邪魔でしかないですよね。

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