医療法人解散手続きについて

2023年10月02日

医療法人を解散する場合、一般的な会社の解散と異なり、医療法に基づいた諸手続きが必要となります。行政機関への届出、法務局への登記申請について解説していきます。

目次

1.都道府県知事の解散認可申請

2.医療法人の解散・清算人選任登記

3.解散登記後の手続き

4.清算結了登記

5.医療法人に関する登録免許税

6.まとめ


1.都道府県知事の解散認可申請

 医療法人制度は、地域医療の永続性の確保を目的の一つとしています。そのため、安易に解散することができません。厳格に手続きが定めれており、所轄庁である都道府県の認可を受けた後、解散の登記を行うことになります。

 香川県の場合、医療審議会は1月と7月の年2回しか開催されません。下図は、もし今(10月)から医療法人の解散を行う場合について、図示したものです。

(画像)全体のフロー図

社員総会において、医療法人の解散、清算人の選任及び残余財産の処分について決議した後、解散の認可申請を香川県へ行います。1月の医療審議会に諮問することを目標とする場合、香川県窓口の担当者との事前すり合わせも考えると、12月頭までには、提出しておかなければなりません。(少なくとも審議会の1か月前には、第一弾の書類を窓口に渡しておくことが必要です。)

 また、解散の認可申請とは別に、診療所の廃止届を提出しておくことも必要となります。X線装置を保有する診療所においては、エックス線装置等に関する廃止届も提出する必要があります。これらの届出書は、県窓口ではなく、高松市保健所に届け出ることになります。

 注意すべきポイントは、診療所の廃止届は、医療法人名での届出となり、エックス線装置等に関する廃止届は管理者である院長個人名での届出となる点です。

 事前に閉院予定日を見越して届け出ることも可能ですが、閉院が予定よりずれ込んだ場合、変更が効かなくなりますので、閉院後10日以内に届け出ることをお勧めしております。

2.医療法人の解散・清算人選任登記

 1月の医療審議会で諮問・答申した後、2月から3月に認可がおりる見通しとなります。認可後、2週間以内に解散及び清算人就任の登記を行います。

 解散登記及び清算人就任並びに清算結了の登記が完了した後、所管保健所への届出が必要となります。

(解散・清算人の選任登記に必要な添付書類)

 ①社員総会議事録

 ➁定款

 ③解散認可書

 ④清算人就任承諾書

 ➄委任状

 ※別途、清算人として印鑑の登録が必要となります。

3.解散登記後の手続き

 解散登記後に、清算手続きに入ります。清算手続きとは「現務の結了」「債務の弁済」「債権の取り立て」「残余財産の引き渡し」をすることになります。「債務の弁済」として官報で2カ月以上公告(法定3回の官報公告)する必要があります。また、判明している債権者には、届出の催告をすることになります。すべての財産を清算したその後清算結了の登記を行うことになります。

※官報公告(香川県の場合) 原稿と掲載依頼書を送ってから、13営業日後に1回目の公告が官報に掲載されます。原稿は、1回目のもののみとなります。2回目、3回目の内容は1回目のものに行追加で官報販売書が実施してくれます。行数が増えるため、1回目より値段が増加することになります。

※未払金等の負債がある場合は、原則、解散することはできません。債権者から債権放棄したことを証する書面をもらうことができれば可能となります。

 売掛金などの債権も、残っていると清算結了登記ができませんので、債権放棄をすることとなります。

4.清算結了登記

 3の清算手続きが完了した後に清算結了の登記をすることになりますが、残余財産が残っている場合には、出資者に分配することとなり、それでも残っている場合には、国庫に帰属することになります。ですので、解散清算費用や役員退職金に割り振って、通常は残らないような形にするのが一般的です。

 清算結了が終わると、清算結了の登記をしますが、

「第五十六条の八 1項 清算人は、その就職の日から二月以内に、少なくとも三回の公告をもつて、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならない。この場合において、その期間は、二月を下ることができない。」されており、解散登記後2か月を下回る期間中に清算結了の登記をすると却下されてしまいますので注意が必要です。

(清算結了登記に必要な添付書類)

 ①清算が結了したことを証する書面

 (1)清算事務結了報告をした社員総会の議事録

 (2)清算結了報告書

 ➁委任状

 また、清算結了登記完了後には、所管保健所に対し医療法人清算結了届を提出します。

5.医療法人に関する登録免許税

 登録免許税法第2条は、課税の範囲を定めており、『登録免許税は、別表一に掲げる登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定及び技能証明(以下「登記等」という。)について課する。』とされています。そしてその対象は、一般社団法人、一般財団法人を含め、会社、外国会社や一部相互会社の商業登記に対する課税を規定しています。同様に特定目的会社や投資法人、有限責任事業組合、投資事業有限責任組合等についても規定があります。

 しかしながら、医療法人に関する法人登記については課税に関する規定はありません。つまり、医療法人を含む公益法人については、その法人登記につき登録免許税を課する規定がないので、課税することができないということになり、これが根拠になっています。

 よって、医療法人の商業登記手続きの登録免許税は、非課税になります。

6.まとめ

 用意しなければならない書類も多く、長期にわたってスケジュール管理することも必要となります。もしご自分のさまざまな理由により、ご自分の手に負えない、ということであれば、アイリスまでお気軽にお問い合わせください。

 アイリスでは、行政への許認可申請・届出及び法務局への解散登記・清算結了登記をシームレスにご対応できます。

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